施設で出会ってから約5年10ヶ月間。
先月ある利用者が逝去されました。ご家族から本人が元気な頃に「田舎に行きたい」と言っていたのを聞いていて、入居した当時から「いつか本人を連れて行けたらいいな」と話をもらっていました。
入居してから年齢を重ね、少しずつ弱ってきた心身状態…。
一昨年初めに、ご家族へ「田舎に行くとしたら今年しかない気がする」と提案させて頂きました。
ご家族もとても考えられたかと思います。
数日後、ご家族の返答は「Yes」でした。

出発日に向けて、ご本人・ご家族に介護・看護師・管理栄養士が準備に準備を重ね、ついに出発日を迎えました。梅雨入り前のその日は晴天でしたね。
空港までのバス、飛行機へと搭乗、そして2泊3日の生まれ故郷へ…。

あの時は何回も電話してしまい、すみませんでした。

帰ってくる当日、坂本と待っている間に、ご本人に会える楽しみと同時に、ご本人の状態とご家族の疲労度が気になって仕方がありませんでした。
停留所から帰ってくるバスが見えて、バスの中から手を振るご家族を見てホッとしました。
バスから下りてきたご家族とご本人に、思わず抱き合って「お帰りなさい!!」と感涙してしまいました。

あの当時のご家族の決断には、頭が下がりました。
そして晴れやかな表情で帰ってきた日の笑顔に、ご家族のご本人を思う気持ちが表れていました。
逝去された今、一昨年に提案して良かったのかどうだったのか自問しています。
後悔が少ない方を選択して頂けたのかどうか、気になっている今日この頃です。
少しでも、この施設で良かったなと思って頂いていたら幸いです。

この場を借りて、ご冥福を祈り申しあげます。
そして私達に沢山の事を教えてくれたご本人・ご家族に感謝しております。
 
施設介護支援専門員 井上