「立場」

関東ではダム底が見える程の水不足が心配された今年の夏でしたが、一転最近では台風による水害を全国各地で受けてます。台風の被害によりお亡くなりになられた方に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
一刻も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 さて、先日外部の事業所で「介護とは」について考える機会がありました。その中で、施設を利用する入居者と、その入居者を支える私たちは、どちらの立場が上でしょうか?と質問がありました。
回答としては、「それはもちろん、利用されている入居者です」となるのですが、本当にそうなのかを現場での言動や行動と照らし合わせ考えてみました。
世間一般的には、上記の回答が正解だと思います。でも、施設を利用している入居者と私たちで比べた時、入居者の方々の多くは、自分の願いのほとんどが叶う事が少ないように思います。
例えば、起床時間や就寝時間は、可能な限り本人の生活リズムに合わせて行うものの、多くの方は「そろそろ寝ましょうか(起きましょうか)」と職員に声を掛けられベッドで横になります。それは、お盆や大晦日といったことに関係なく365日同じように生活が繰り返されます。
例えば食事介助の場面では、「あと一口ですから食べましょう」と口元に食物が運ばれてきます。
例えばトイレに行こうと立ち上がると「どうされましたか」と職員が駆け寄ります。
つまり、施設で暮らす入居者の方々は、立場は私たちより上と認識しながらも、その多くは介護する私たちの管理のもと過ごしていることが多いように感じるということです。
ですから、職員間の会話の中にも「薬飲ませた?」「○○さん寝かせた?」「午前中にお風呂入れちゃう?」といった言葉を耳にすることがありますが、どの言葉も職員の方が立場が上であることを感じ受けます。

私たちは、「入居者の方が立場が上である」と認識して応じることは大切ですが、それよりも「私たちの方が立場が上となってしまう事が多くある」と認識し、だからこそ入居者の言動や行動に対して、私たちは専門職として受け止め、応じていけることも同じ位に大切なんだと思います。

そう考えられる事で、入居者の方々の言動(願い)の1つ1つは、とても大切な発信で、「その1つ1つを丁寧に応えさせて頂きたい」と受け止められるのでは。

施設で暮らす入居者の暮らしを、より豊かにしていく上では、そんな些細なことも重要な1つなのでは。

施設長 八幡 雅冬